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のです。」
「学校教育は教科書がありますが、社会教育は教科書がありません。だから、社会教育は決まったお手本がなくてもできるのです。規制が少なく創意工夫ができます。生活科の授業で教科書ができてから授業がつまらなくなったといわれます。教科書にたよった授業から大胆な発想は生まれません。」
「学校教育は正解を求めます。しかも、その正解はたいていがひとつです。ところが、社会教育は正解を求めません。だから、答がいくつあってもよいのです。」
「学校教育は学校と先生を選べません。社会教育は先生が決まっていません。学習者が必要と思う講師を選択できます。」
少し話が長くなるが、次のような説明で両者の違いを一層浮き彫りにする。
「例えは悪いが、釣り堀で魚を釣るのが学校教育です。一方、太平洋で魚を釣るのが社会教育です。学校教育は子どもが来るのを前提にしています。だから、いつの時間帯が一番学習欲求が強いか、にこだわります。時間割はまさにこうした視点から組み立てられます。そして、4間×5間の20坪の教室という限定された空間で勝負する、ことになります。ところが、社会教育は学習者が来てくれることを前提にして組み立てません。学習者は魅力がなければ来てくれないことを前提にします。だから、学習者がどこにいて、どんな学習ニーズを持っているか、魚群探知機を使って調べねばなりません。従来のように「経験とカンだけ」に頼っていると誰も来てくれなくなります。そして、学習者が来ても内容が悪ければリピートしてくれません。それだけ社会教育の方が難しいのです。」
これからの青少年施設は、こうした社会教育的な視点から捉え直して組み立てねばならない。そうしないと、青少年の自主性を育てることは絵に描いた餅になる。
■施設は「生き物で寿命がある」という自覚が大切
「会社は何年もつか」このことは、経営者だけではなく社員一人ひとりも考える。ところが、残念ながら公教育の関係者は「この施設は何年続くか」「この学校は何年もつか」という自覚が乏しい。
日本経済新聞の調査部が、明治から今日までの一部上場の企業を対象に、創業から倒産までの年限を調査している。その成果は、『会社の寿命』『続会社の寿命』にまとめられている。詳しくはそれらの本に譲るが調査部が発見した次の経験則は注目に値する。
「会社の寿命は30年」会社は生き物で寿命があり、しかもその寿命は30年しか持たない、という知見である。経営者は会社を起こしたときは意欲もあり努力もするが、安定期に入ると油断をしマンネリ化に陥り、よくて30年しか持たないということである。
しかし、会社はある日突然倒産するわけではない。それまでに兆しがある。いわば黄色信号が点滅するのである。その兆しは次の二つあるといわれる。
「従業員の平均年齢が30歳を超す」
「ひとつの製品の売上額が全売上の70%を超える」
例えば「ミツワ石鹸」、「カルピス」は、20数年間石鹸とカルピス一筋に生きてきた。多角経営をしなかったがために30年を待たずに倒産し、商標登録は別会社に売却される。
まさに会社は生き物である。施設も例外では

 

 

 

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